近所の小料理屋さん

どうもこんにちわ。NOBOです。

 

去年からやろう。やろう。明日やろう、と思いながら、年をまたいで3月になってしまいまして。ようやくもう一つブログを立ち上げる事ができました。

 

メインのじゃじゃ嫁日記は、嫁が主人公でありながら主観は僕なので、夫婦で共有した出来事がメインになるんですが、そうそう年中二人で行動しているわけでもないし、僕の個人的な出来事や考えている事を描きにくい、という葛藤がありました。

 

もうちょっと自由度の高いスペースが欲しいと思ったのが、立ち上げの動機でして、と言っても本当に地味というか、気楽なブログにしたいと思っていますので、宜しくお願いします。

 

今回は、僕が住んでいる地元にある小料理屋さんについて。

 

僕が住んでいる近所は本当に田舎で、飲食店に限らずお店自体が少ないのですが、そんな荒廃感漂う過疎地に、1つだけ際立って良いお店があります。

 

60後半位のご夫婦で切り盛りされている上に、中もそれほど広くないので、あまり多くのお客をさばけないんですが、お通し一つとっても、じっくり味わいたくなる出来栄えで、最近では行くと満席で入れない事もしばしば。

 

「元々は10代の頃から京料理を学びましてね。それから東京へ出て向こうで長い事やってましたよ。」

 

何度か足を運ぶうちに、カウンター越しにお話しをうかがえるようになりました。以前は東京の方で、料理長として何店舗か切り回されていたそうで。

 

そうかぁ。これは東京の料亭で出される京の味なんだな。どおりで美味い。しかしなぜか安い。良心価格。なぜこんな片田舎にお店を。。。

 

「こっちに家を買いましてね。畑もやってるんで。お客さんとこうやってお話するのが好きだし、半分道楽でやってるんですよ。」

 

だからお店としてガツガツと営業する雰囲気ではないし、いたってマイペース。

 

「今日は混んでいるので、ご注文のお料理は遅れます。」

 

なんてはっきり言われるので、そんな時は「どうぞごゆっくり」と返します。キャパは承知しているので、ご無理は言えません。お通しとビールでのんびりとお店の中を眺めながら、料理が来るのを待ちます。

 

そんな折に、ふと目にとまったものがありました。店内に額で飾られた、何点かの日本画。いや日本画というか。。これ。。

 

f:id:rise_more:20160304232613j:plain

 

子連れ狼ですよね。

 

f:id:rise_more:20160304232801j:plain 

 

小島剛夕って書いてある!

 

ご存じない方すいません。大昔に子連れ狼という有名な時代劇がありまして、個人的には萬屋錦之介が演じられていたのが好きだったんですが、元々は小島 剛夕(こじま ごうせき)という有名な劇画作家が絵を手掛けていたのです。(原作は小池一夫)ちなみにすでに亡くなられています。享年71歳。

 

レプリカだかなんだかよく分からないけど、子連れ狼を飾ってあるお店って珍しい。これはご主人の趣味かなぁ、と俄然興味が湧いたので、おかみさんにちょっとうかがってみました。

 

「これ子連れ狼ですよね?いいですねぇ。」

 

「あぁ、昔、東京でお店やってる時に、よく来てましてね。うちでご飯たべさせたり、よく面倒みてたんですよ。あの頃お金が無いっていって、何枚も描いて置いてったんですよ。」

 

「え、本人が?本物ですか?これ?」

 

「もちろん本物ですよ。」

 

うへぇ!こんな田舎で小島剛夕の肉筆が見れるなんて!奇跡か!!泣ける!!

 

「いつのまにか色んな人が持ってっちゃって、何枚も残ってないんですけどね。たまにこうやって飾ってるんです。」

 

神々しい。という事は小島先生も、若かりし頃にご主人の料理を食べていたわけで、舌つづみをうちながら、一杯やっていたんだなぁ等と思うと、ちょっと目がしらが熱くなる。

 

「うちには色んな方みえましたけど、小島さんとか漫画家の方もよく来られてましたよ。水木先生もいらしてましたね。」

 

「えぇ!?水木しげるまで!!・・・どんな方だったんですか?」

 

ご主人が沈思した後に口を開く。

 

「水木先生はとても人格者でらっしゃいましたねぇ。」

 

できれば詳しく話を聞きたいところだが、恐らく細かいやりとりまで覚えていないだろう。ご主人の想い出に残る水木像に思いをはせる。(ちなみにこの話を聞いた当時は、まだ水木先生は亡くなっておらず、連載をもたれていた。)

 

色々と話しを聞いているとどうも、財界や政治家も足を運ぶようなお店だったようで、重ね重ね、こんな田舎でお店やられることないのにって思うんだけど、あぁなんてことだ。

 

往年に活躍されていた漫画家達が、集って酒を飲んでいた情景が目に浮かぶんで泣ける。

 

子連れ狼の主役である拝一刀(おがみ いっとう)と大五郎。

f:id:rise_more:20160305002406j:plain

二人はひたすら刺客を切り伏せ傷つきながら、柳生一族に復讐すべく冥府魔道の道を歩み続ける、という結構過酷な宿命を背負っているので、基本的に殺気立った顔をしているのですが、上に描かれた二人の表情はとても穏やか。そういえば、作中に拝一刀の笑顔って覚えてないから、これが精一杯の笑顔なのかも。

 

売れっ子の作家として殺伐とした日々を送る中で、ご主人のお店で酒を飲むのが数少ないの楽しみだったんじゃないだろうか。等と思ってみる。

 

こちらはまた別の絵ですね。線が柔らかい。日本酒が好きだったのかなぁ。

f:id:rise_more:20160305001935j:plain

 

と、いうわけで、個人的に特別なお店なのです。なにぶんご高齢のお二人が切り盛りするお店なので、お体に気をつけて、無理の無い範囲で営業して頂きたいと思っています。

 

お店の名前は。。実は写真を撮る許可は貰ったんですが、サイトに載せる所まではお話しておらず、ちょっと明記までは勘弁していただけると助かります。。

 

実は名前は絵の中に書いてありますので、ご興味があれば。